芥川賞2019ニムロッドのあらすじとネタバレ!感想と評価も
2019年1月16日に第160回芥川龍之介賞(芥川賞)・直木三十五賞(直木賞)の選考会が開かれ、2018年下半期の芥川賞・直木賞が決定しました。
芥川賞に選ばれたのは、上田岳弘さんの「ニムロッド」と町屋良平さんの「1R1分34秒」。今回この2作品の同時受賞という形になります。
また、直木賞に選ばれたのは、真藤順丈さんの「宝島」でした。
上田岳弘さん、町屋良平さん、真藤順丈さん、芥川賞・直木賞の受賞おめでとうございます!
今回は芥川賞に見事受賞した上田岳弘さんの「ニムロッド」に注目して、作家の上田岳弘さんについてや、小説「ニムロッド」のあらすじやネタバレ、読んでみた感想と評価などについて書いていきたいと思います。
芥川賞受賞作家・上田岳弘さんのwiki風プロフィール
【名前】 上田 岳弘(うえだ たかひろ)
【職業】 小説家
【生年月日】 1979年2月26日
【出身地】 兵庫県明石市
【最終学歴】 早稲田大学法学部
【代表作品】 「私の恋人」(2015年)
【デビュー作品】「太陽」(2013年)
上田岳弘さんは兵庫県明石市出身の小説家です。
最終学歴はなんと早稲田大学法学部卒業というエリート具合。
元々は法人向けのソリューションメーカーの立ち上げを行い、ビジネスマンとして活躍。
役員として会社を支えてきました。
しかし、そんなエリートビジネスマンな上田岳弘さんですが、2013年に「太陽」という小説を書き上げ、新潮新人賞を受賞して小説家としてデビューを果たします。
元々小さい頃から本が多い家庭に育ち、文学に親しみがあった上田岳弘さん。
兄や姉が学校で教わってきた文学を幼い上田岳弘さんに教えてくれたこともあり、かなり小さい頃からひらがなが書けるようになったりと、文学に興味を持ち始めることに。
その頃から徐々に「これでお金をもらって生きていけるなら、それが一番いいんじゃないか」と思っていたんだそうです。
上田岳弘さんが小説家になったのには、小さい頃から本と近い距離にあった家庭環境が背景にあったようですね。
その後、高校で理系コースに進んだり、早稲田大学の法学部に進んだりと真逆の方向で進学していった上田岳弘さんでしたが、「本当に作家になるのであれば、そろそろやらなければ」と思い立ち、本格的に小説制作に取り組み始めました。
小説を書き始めたのは大学卒業間近の頃。最後まで書き終えられた1作目が完成したのは22,3歳の頃のことだったんだとか。
しかし、小説を書いてはいるものの中々結果を残せず。2年間程、“小説家志望”という肩書の元、ぶらぶらと自由に過ごしていたんだそうです。
そんな時知り合いからIT企業の立ち上げの話があがってきて、法人向けのソリューションメーカーの役員として働くようになったんだとか。
そして現在も小説家兼ベンチャー企業役員として活躍されている上田岳弘さん。
巷では“天才”なんて言われたりもしているみたいですね。
実際、めちゃくちゃ凄いですよね。IT企業の役員として働きつつ小説家というステージでもしっかりと結果を残しているなんて。
また、上田岳弘さんは2013年に「太陽」で小説家デビューした後も数々の作品を世に送り出してきました。
2015年には「私の恋人」が第28回三島由紀夫賞を受賞。ピース又吉さんの「火花」との決選投票の末の受賞となりました。
2016年には国際文芸誌Grantaの日本語版では「Best of Young Japanese Novelists 2016」にも選出。
2017年には「キュー」を文芸雑誌の新潮とYahoo!JAPANスマートフォン向けサイトで同時連載を開始。この取り組みは「IT×文学」という新しい形の提供方法であり、各所で話題になりました。
2018年には「塔と重力」で第68回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞しました。
そして、2019年1月。今後上田岳弘さんの一番の代表作となるであろう「ニムロッド」が第160回芥川賞に選ばれました。
エリートビジネスマンとして働きつつも小説家として数々の受賞歴を残し、ついには芥川賞も受賞してしまった上田岳弘さん。
何の捻りもない表現方法ではありますが、ただただ凄いですよね。
ニムロッドのあらすじとネタバレ
続いて、2019年に第160回芥川賞を受賞した上田岳弘さんの小説「ニムロッド」のあらすじとちょっとしたネタバレについて書いていきたいと思います。
ニムロッドのあらすじ
それでも君はまだ、人間でい続けることができるのか。 あらゆるものが情報化する不穏な社会をどう生きるか。仮想通貨をネット空間で「採掘」する僕・中本哲史。中絶と離婚のトラウマを抱えた外資系証券会社勤務の恋人・田久保紀子。小説家への夢に挫折した同僚・ニムロッドこと荷室仁。やがて僕たちは、個であることをやめ、全能になって世界に溶ける。すべては取り換え可能であったという答えを残して。
ニムロッドは社会的にも大きな話題となっていた“仮想通貨”をテーマにした作品です。
主人公の中本哲史はサーバーの保守業務を行う企業に勤めており、この物語は主人公の中本がビットコインの取引データを記録する業務を命じられるところから始まります。
主人公の他にも中絶や離婚のトラウマを抱えた恋人や小説家になる夢に挫折した同僚などが登場し、話が進んでいきます。
ちなみに小説のタイトルである「ニムロッド」というのは同僚の荷室仁のこと。
主人公のビットコインのマイニング、彼女の存在、ニムロッドの小説。これらが話のキーとなり絶妙な物語となっていきます。
ニムロッドの内容ネタバレ
※ここからはネタバレを含みますので、苦手な人は飛ばしてください。
「ニムロッド」は仮想通貨をテーマにした物語であり、ビットコインの取引データを記録する業務を主人公の中本哲史が社長から任されるところから話は始まります。
徹底した合理主義者の彼は、感情を表に出さずに仕事を淡々とこなしていきます。
主人公の中本と恋人関係にある田久保紀子、同僚のニムロッドこと荷室仁とのメールとのやり取りなどを通じ、物語は進んでいきます。
物語の核となるのはニムロッドから送られてくるとあるメール。
メールの内容は「ダメな飛行機コレクション」というニムロッドこと荷室が書いた小説。
・駄目な飛行機があったからこそ、駄目じゃない飛行機が今ある
・でも、もし駄目な飛行機が造られることがなく、駄目じゃない飛行機ができてしまえば、彼らは必要なかったのか?
こんな哲学的なメールが主人公の中本の元に届きます。
この駄目な飛行機はおそらく現代の効率至上主義やAIなどに対する皮肉として作中では用いられているのでしょう。
現代社会ではスマホや仮想通過など新たな技術が発達、利用されており、日に日に便利な世の中になっています。
この現代の便利な世の中に対する在り方、それらは本当に必要なかったのかという問いかけ。
そういった深い意味が込められているのではないかと。
誰かが記録することで存在していることが証明されるビットコインの仕組みの話や恋人・ニムロッドとのやり取り。
ニムロッドが書く「駄目な飛行機」という小説を小道具としてうまく使い、現代の高度情報化社会に対する個人個人の在り方について問いかけてくる。
現代社会の問題、現代人の在り方、将来への不安・・・。そういった現代・未来への悩みを作者の視点から表現していっている。
そんな作品内容になっています。
ニムロッドの感想と評価
読んでみた感想としては、素直に面白い。そんな感じでした。
流石芥川賞受賞作。って感じ。
よくある小説の展開としてのエンタメ的な面白さというよりも、この小説を通して感じられる思いや現代社会の問題に対する問いかけというか、考えさせられるような面白さとでも表現すればいいんでしょうか。
駄目な飛行機が伝えたいことは何なのか。じっくりと考えさせられました。
タイトルやあらすじを見ただけでは一見SF物の小説なのかな?なんて思ったりもしていたんですが、全然そんなこともなく。
確かにビットコインがテーマの一つとして扱われているのは間違いないのですが、内容としては割と普遍的な物であったかなと。
ビットコインや駄目な飛行機の話などが小道具として上手く使われており、合理性を追求していく人の行動に対する意味など、現代の効率主義的な考えや縛られない未来について改めて考え直そうかなという気持ちにさせられました。
作者の上田岳弘さんの経歴なんかを調べたりしていたら、IT企業として働く上田岳弘さんならではの視点で意見・思いが込められていた作品だったんだなと改めて感じさせられました。
評価するのもおこがましいですが、人に「読んだ方がいい?」と聞かれたら、「ぜひ読んでほしい!」と私は言うでしょう。
ツイッターなどのネット上の評価を見ても、良い作品だったという感想が多くあげられていたので、多くの人が私と同じ感想を持っているんだと思います。
小説なんかあまり読まないなって人にもぜひ読んでほしい。
そんな思いになる作品でした。
今回の記事のまとめ
今回は第160回芥川賞受賞作品「ニムロッド」の作者・上田岳弘さんのことや、「ニムロッド」のあらすじ、ネタバレ、感想・評価などについてまとめさせていただきました。
なんというかニムロッドは現代社会について改めて考えさせるような作品だったなあ。って感じです。
芥川賞を受賞するだけの作品だと思いますので、読む価値は十分あると思います。
非常に興味深い作品でした。
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